ぐちゃぐちゃ

月曜13時半、6畳半のアパートで私は泣いた。

私の生きる糧であり、死にたい欲望の根源である「あの子」のメッセージ音声を聞いたからだった。

彼女の誕生日に合わせてプレゼントを郵送したのだが、その反応を音声として撮ってくれた。わずか8分と少しの音声。
私は彼女の部屋へ行ったことがあるから、あの子があの部屋のテーブルに届いた箱を置いて、録音ボタンを押すところをイメージした。物を捨てられないあの子の部屋には、小学校で作ったと思われる小さな工作物や、ファンシーな柄の鉛筆キャップを被った鉛筆がある。日当たりはさほど良くないあの部屋。壁際にバイト服がかけてあるあの部屋。高校卒業直後に、大学合格祝いとして私があげたスマホケースに収まったスマホ。今や旧型と言われる機種のiPhone。

プレゼントには手縫いで刺繍をしたポーチと、前に遊んだ時に興味を示していたピアスと、私のおすすめのトップコート、そしてフェイスマスクを入れた。元々フェイスマスクはプランになかったが、はてあの子はこういうものも使うのかしら、と興味本位で入れてみた。もはや久々に実家に帰ってきた子供に何でも持たせたがる親の気分。
ケーキとか、コスメとか、そういう正統派なプレゼントは、私の知りえないあの子と今会える友達に任せよう、と思った。私には、残念ながら、高校までのあの子の記憶と年に2回会った時の記憶しかない。だからその範囲内で、私なりに伝えよう、と思った。

音声を聴きながら、視点はテレビ前に並べているぬいぐるみ達に合わせた。得られる情報を、音声のみにしてしまったら私は潰れてしまう気がした。現実の今ここと、音声の中のあの時あそこを重なり合わせないように、呼吸を規則正しくしようと意識した。

もう正直、手紙に何を書いたのかは覚えてない。多分去年と似通ったことを書いたんだと思う。し、私たち以外にしてみたら、「友達としては重くない?」って、思われそうな内容を書いた気がする。レター用紙2枚を小さな字で埋めた。あの子が読んでいる間の無音がこそばゆい。ごめんなさい、そんなこと書いて。ごめんなさい。でも書かずには居られなかった。何をかはもう覚えてないけれど。

プレゼントの中で一番喜んでくれたようなのはピアスで、今度会う時につけていくと言ってくれた。それでいい、と思う。そうして、今私の手の届かないところにあるあなたの日常に、少しだけでも私を混ぜてほしい。あわよくば、時々ピアスを見る度に、私の今を案じて欲しい。高望みかな。

あなたの今の場所での大好きが、私の知っているあなたの大好きを塗り替えていくのが怖い。私は過去に置いていかれるような気分になる。かと言って、今の大好きを聞きたいとも思わない。聞いてしまえば、受け入れることになるから。聞いてしまえば、認めることになるから。
あなたはそんな私の気持ちを、知ってか知らずか、大学での友達の話をあんまりしないし、私の前では私の知っているあなたでいてくれる。私の知っているあなただけど、少しだけ広い世界を見た目をしている。

こんなにも、心の底から惚れ散らかして、だけどきっと報われない。

もうなんか、女同士とか関係ないんだよね。ただ、私はあなたが好きで、叶いそうもない。それだけ。その事実を飾るように、女同士だったり、私が一度振られてたり、あなたが好きを知るために好きでもない男と付き合ったり、二人して愛ってなんだって途方に暮れてたり、いつまでも私が高校の頃に縋ってたり、今あなたに好きな人がいるのかどうか私は知らないまま別れたり、するだけ。それだけ。

もう疲れちゃったな。
虹の橋を渡れる社会が来る前に、虹に拒否反応を起こす体になってしまいそう。
LGBTQの勉強だって、最初は自分のためだったけど、今は自分の首を絞めているだけで。性別の壁を乗り越えて幸せになりました!のおとぎ話も、性別の壁に阻まれて離れ離れになりました、の寓話も、つらい。だって、私の話じゃないから。

なにがつらいんだ。

録音聴きながらボロボロ泣いて、体温上がって、まだパジャマのままだなって、涙しょっぱいなって、通話しようって言うけど通話するのも辛くて、嬉しいけどさ幸せだけどさ、そう。

20歳になった。
出会って5年。
私たちは、大人になる。
私たちは、もう大人。
汚いことも煌びやかなこともできちゃう、大人。
私たちには、もうあのセーラー服は似合わない。

どうか、ずっとあの子が清らかなままでいますように。ほかの何からでも汚されませんように。もしそんなことがあるなら、他の誰かにされる前に、私が。
と、思うけど、そんなこと間違ってるとも分かるから、死ね。あの子が選びとる幸せを真っ直ぐに応援できない私なんて、死ね。

そう思う。

本当に何かあって、私が死んだら、このブログが証拠としてスクショされるんだろうか。
それはそれで面白いかもな。

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