湊かなえ「少女」
2023-02-26 読了。
高校でいちばんの友達に、おすすめしてもらった本。去年の夏に一緒に寄った本屋で買って今まで積んでいたのだけれど、次に会う予定が近づいてきていたから手をつけた。
「子どもなんてみんな、試験管の中で作ればいい」
そんな書き出しで始まる遺書で物語は幕を開ける。ドキッとした。その遺書の書き手が、「少女」だということもあって。
交錯した思いと立場が巡り巡って全て繋がる。私は日頃から物語の布石やら伏線やらの話を講義で聞いているから、張り巡らされた透明な糸にことごとく気づいてしまった。が、友達が「もう1回読みたくなる」と進めてきたのはよくわかる。確かに、「よく出来た物語」すぎるとは思う。別々の場所で進んだ人間関係同士が、都合よくあんなに小さくまとまることなんて無い。けれどそれを起こして良いのがフィクションであって、ユキの逃げ込んだ世界の本質そのものなんじゃないか。そう思う。
(その割にアスタリスクでの切り替えについて気づかなかったから鈍感な読者でもあった訳で。それぞれの因果応報には気付けたのにな)
昴と太一の入れ替わりはその前兆がなかった(見逃した?)のでびっくりしたね……。
湊かなえは初めて読んだので良い経験になりました。
追記
東野圭吾、湊かなえ、宮部みゆき
なんかは、書店に並ぶ人気作家なのに講義には出てこない。それはなぜなのかって、ある意味はっきりと「大衆文芸」に振り切っているからなのかもしれないと思った。作家論としてはあるかもしれないけれど、作品論としてまで論じられる作品は少ないのかも、と。
推察でしかないですが。
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