813 それは遠い昔の、小さなお話
あるところに、女の子がいました。
女の子は、ふつうの高校に通い、ふつうにお友達とおしゃべりをし、家に帰れば寝転がってYouTubeを見るような、至ってふつうの女子高生。
「あたしら、ふつうに生きてふつうに死んでく。お嫁さんになって家庭を築いて子供に囲まれながら暖かいベッドで死ぬ。ふつうの幸せに満足して朽ちていく」
それは合言葉。ふつうの女の子たちのあいうえお。
だから、その女の子も合言葉を唱えます。
「あたしら、ふつうに生きてふつうに死んでく。お嫁さんになって家庭を築いて子供に囲まれながら暖かいベッドで死ぬ。ふつうの幸せに満足して朽ちていく」
肩までで切りそろえた細い髪に少し猫背な背格好。はやりのメイクを施した無機質な顔から、針金で整えられた白い歯が不気味にこぼれる。口角の吊り上げ方は画面の向こうのアイドルが教えてくれる。纏う香りはフェミニンな媚薬。
「だってあたしたち、女の子だもん」
なんてね。
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